デジタルトランスフォーメーションを推進する組織
生産性の向上や、労働力のデジタル化、イノベーションの創出などが叫ばれるなか、企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が強く認識されつつあります。
実際、DXを推進するために、専門組織やCDO(チーフ・デジタル・オフィサー:最高デジタル責任者 )を任命することも増えてきています。
企業としてデジタルトランスフォーメーションを推進するためにはどのような体制づくりが求められるのでしょうか?
代表的な組織体制
企業の多くは、代表的に下記の組織体制で運営されています。
- 機能別組織
- 事業別組織
- マトリクス組織
機能別組織は、「製造」「販売」「開発」など担当する機能ごとに、また、事業別組織は、「金融」「産業」「サービス」など事業領域ごとに組織されたものです。
マトリクス組織は、機能別組織と事業別組織のそれぞれの持つメリットを同時に実現することを目的として、それぞれの「機能」と「事業」を網の目のようにとらえた組織構成です。
機能別組織とDX
機能別組織において、デジタルトランスフォーメーションを推進しようとした際に、そうした能力と権限を持つ組織を、機能の一つとして新設・追加するということがあります。
一方で、機能別組織においては、多くの企業が、いわゆるIT・システムなどの機能や役割を持った組織がすでに存在することがほとんどでしょう。
そうした際に、「DX組織」を、それらの「既存 IT・システム機能」の一組織とすべきか、別建てにすべきかは論点の一つでしょう。
DXは「現状がどうであるか?」ということだけでなく、「そもそもどうあるべきか?」ということも求められます。
DX組織を、既存 IT・システム機能の一部の組織とした際の、懸念点としては、 現状をよく知るがゆえに、そのしがらみなどから、現状を脱却しにくいということです。
そのため、DX組織を、社長直下に設立し、メンバーは外部と既存メンバーの混成などで構成することもあります。
その際、DX組織と既存IT・システム機能がバッティングを避けるためにも、キーマンを引き抜くなどの施策を講じることもあります。
事業別組織とDX
事業別組織を組成する企業においても、既存組織と別建てでDX組織を編成することは有効です。
もちろん、一事業のDXを推進するために、事業部傘下にDX組織を組成することも可能ですし、企業の規模によっては一事業でそこらの中堅企業よりも大きいということはよくあることです。
その一方で、事業どうしのシナジーやそこでの知見を活かすためには、組織横断的なDX組織を構成するケースが多いでしょう。
その際の注意点としては、DXの目的の一つに業務改善だけでなく、新しいデジタルテクノロジーを活かして、「ビジネスモデルそのものの変革」するということがあります。
事業別組織においては、それぞれの事業部ごとで、そもそものビジネスモデルが違うこともよくあることです。
事業部から別建てで組織されたDX組織が、いかに業務改善の知見・ノウハウだけでなく、企業のビジネスモデルの変革にも貢献する仕組みとするかは組織に合わせた工夫が必要になるでしょう。
その際に、経営計画やビジネスモデルの変革などをミッションにした、「経営企画部」と「DX」組織の適切なコラボレーションなどもその一案となります。
マトリクス組織とDX
また、一般的に組織図とは別に、実際の事業を展開していく中では、企業はマトリクス的に運営されていることがほとんどです。 (実際の組織図もマトリクスになっているケースもあります)
もちろん関わりあいの強い組織(部署)と、同じ会社でありながら何をやっているかも分からない組織(部署)など、その繋がりには濃淡はありますが、 組織どうしの繋がりはマトリクス的につながっているものです。
そうした際に、企業の機能として「経理」や「法務」と同様に、既存IT・システムにとどまらない「DX」を統括する仕組みを構築することは、企業の競争優位の確保の為に、その必要性が高まってきています。
もちろん、企業の規模や組織体制は会社ごとに違いがあり、また目に見える組織図だけでなく、企業文化などに応じて、DXを推進するために、適切な組織構造を一律で語ることはできません。
ただし、デジタルテクノロジーが様々な業界で、業界そのものを変革させている昨今において、いかにスピード感を持ってビジネス機会の創出や、時に有効な変革の旗振り役となる組織を適切に構築していくかは、今後の企業の事業継続において、必須の能力となっていくでしょう。
デジタル・エレクトロニカ(Digital Electronica) では、企業・団体のDXの推進のご支援と共に、引き続き情報を発信していきます。