デジタルトランスフォーメーションは技術革新が後押し
IT技術の進展を支えた、 インテル社創設者のひとりであるゴードン・ムーア博士が1965年に 「ムーアの法則」を発表しました。
導体の集積密度は18~24カ月で倍増し、チップは処理能力が倍になってもさらに小型化が進むという法則
"Cramming more components onto integrated circuits", Electronics Magazine 19 April 1965
実際に、ムーアが予言した方向性の通り、コンピューター性能は継続的に向上してきました。また、インターネットの登場により、企業のビジネスは根本から変革が求められ、対応に遅れた企業の競争優位性の低下が余儀なくされています。
そして、PCやインターネットの登場と同様に、企業の変革(トランスフォーメーション)を後押しするテクノロジーは、定期的に生まれてきています。
- オンプレミスからクラウド
- PCからモバイル
こうしたクラウドファースト、モバイルファーストの流れと共に、DXを推進する上で大きなポテンシャルを持つテクノロジーが注目されています。
- 人工知能(AI)
- IoT
- ビッグデータ
- ブロックチェーン
- 量子コンピューター
デジタルトランスフォーメーションと人工知能
人工知能(AI)の研究は古くは、1950年代から進められてきました。
その後、コンピューター性能の向上ともに、ディープラーニング(深層学習)などのブレークスルーもあり、企業経営においても活用事例が多数生まれてきています。
例えば、画像認識については、世界的な画像認識のコンペティションである「ILSVRC(Imagenet Large Scale VisualRecognition)2012」で、トロント大学の研究チームがディープラーニングのテクノロジーを用い圧倒的な精度を叩きだしました。
それを皮切りに、他の研究者も画像認識に、ディープラーニングを用いることとなり、認識精度は年々向上を続け、現在ではエラー率が5%以下と既に人間のレベルを超える領域に達しています。
こうした人間の「目」で見て認識できるものについては、ビジネスの現場でも人工知能での代替がなされてきています。
例えば、帳票などを人間が確認し、エクセルに打ち込む業務などは、OCRやRPAの導入が進んでいます。
また、囲碁などルールが規定されている領域において、Google DeepMind社が開発したAlphaGoは、 2016年3月に世界トッププロを撃破しました。
囲碁は場合の数が膨大で、人類が発明した最も複雑なゲームともいわれ、局面を画像として認識することもできることから、人工知能開発にしのぎを削る企業がこぞって参戦しています。
GoogleのAlphaGoをはじめ、facebookはELF、中国テンセントも絶芸などの囲碁AIを開発しています。囲碁AIで培った機械学習や強化学習の知見は、他の領域にも適応可能で、 Google DeepMindはデータセンターの省力化などにも応用しています。
また、こうした人工知能が浸透した業界では、ビジネスそのものも変革が生まれています。先の囲碁の例でいうと、囲碁の指導や解説を行うのは専らプロ棋士の仕事とされてきました。
ただ、囲碁AIの普及により、囲碁の検討や状況解説にAIが導入されてきています。これは将棋などでも同じ動向が生まれおり、「AIネイティブ」と言われる、AIから囲碁や将棋を学んだプロ棋士が誕生してきているのです。
このように、テクノロジーの進化と浸透により、提供価値の変化や、ビジネスそのものの変革が求められてきています。これはどこかの業界に限った話ではなく、すべての業界に関係した話であるということは企業経営において重要なメッセージとなります。